【徹底解説】サステナブルファッションとは|「エコと書いてあれば安心」という誤解を解くための地図

2026.10.15 基礎知識 通史 編集部
対象が完成品でなく『服の一生』全体であり、どこか一箇所が破綻すれば成立しないことを理解させる

サステナブルファッションとは、服を作り、着て、捨てるまでの全過程で、環境・作り手・社会への負荷を減らそうとする考え方だ。
素材の話に見えて、実は素材だけの話ではない。

この概念を押さえておくと、ブランドが掲げる「エコ」や「透明性」が中身を伴うのか、それともただのイメージなのかを、自分の目で見分けられるようになる。

一文で言うと、服の一生全体を見る発想である

「サステナブル」は英語の sustain(持続する)と able(できる)を合わせた造語で、「持続可能な」という意味を持つ。

ここで肝心なのは、対象が「完成した服」ではなく「服の一生」だという点だ。
原料をどう育て、どう染め、誰がどんな条件で縫い、着たあとどこへ行くのか。
その全ライフサイクルで環境・人・社会に配慮しようとする——それがこの概念の芯にある。

だから、生地が良いだけでは足りない。
縫った人の労働条件が過酷なら、あるいは売れ残りが焼却されるなら、どこかで一生が破綻している。

最近の流行ではない。思想は半世紀前から育っていた

「2010年代に突然生まれた新しいトレンド」と思われがちだ。
これは正確ではない。

運動としてのルーツは1960〜70年代の対抗文化にまで遡る。
ヒッピーやパンクが鳴らした環境意識と、大量消費への拒否。
それが土台になった。

用語としての「サステナブルファッション」が初めて現れたのは1990年代とされる。
1992年の国連環境開発会議、いわゆるリオ地球サミットとほぼ同じ時期に、ファッション・テキスタイル誌に「グリーンイシュー」が登場し、そこで Patagonia や Esprit が取り上げられた。

つまり、言葉も企業の実践も、30年前にはもう動いていた。
新しいのは流行であって、思想ではない。

思想のルーツが1960〜70年代の対抗文化にあり、1990年代の言葉の登場より前から育っていたことを理解させる

どこまでが当てはまり、どこからが当てはまらないのか

ここが、読者がいちばん知りたいところだろう。

当てはまるのは、ライフサイクル全体に及ぶ具体的な配慮だ。
有機綿やリサイクルポリエステル(rPET)、木材パルプから作るテンセル(リヨセル)といった素材選び。
公正な労働慣行。
サプライチェーンの透明性。
裁断くずを出さない製法。
売れ残りを捨てない仕組み。
どれも「服の一生」のどこかに手を入れている。

では、何が当てはまらないか。

明確な定義も検証可能なデータも示さないまま「サステナブルである」と掲げるだけの主張だ。
消費者が真偽を確かめられない宣言は、この概念の実質には届いていない。

判断の軸はひとつ。
その取り組みが、負荷を実際に減らしているかどうかだ。
ファッション産業は世界の水質汚染の約20%の原因とされ、その主因は染色工程にある。
綿のTシャツ1枚に約2,700リットルの水がかかる。
この規模の負荷を前提にすれば、「減らしているか」という問いが自然と軸になる。

検証可能な具体的配慮と、根拠なき宣言との境界線を、負荷を『実際に減らすか』という軸で理解させる

スローファッション、倫理的ファッション、クルエルティフリー——どれも同じではない

サステナブルの近くには、似た言葉がいくつも並んでいる。
混同されやすいので、ひとつずつ場所を決めておきたい。

スローファッションは、2000年代初頭に登場した運動だ。
よく考えて買うこと、長く使える製品、透明性、倫理的な作り方を説く。
サステナブルと重なる部分は大きいが、より具体的で、同義ではない。
サステナブルという広い考え方の、ひとつの実践形と見るのが近い。

倫理的ファッションは、重点がずれる。
労働条件や動物福祉など、人・社会・倫理の側に焦点がある。
環境面を中心に含むサステナブルとは、見ている方向がやや違う。

クルエルティフリーは、さらに別の軸だ。
毛皮・革・羽毛など、動物由来の素材を使わないという理念である。
環境配慮の全体とは独立している。

この三つは重なりながらも中心がずれている。
だから「サステナブル」という一語で全部を代表させると、必ずどこかがこぼれる。

三つの概念が重なりながら中心がずれており、一語で代表させると必ず何かがこぼれることを理解させる

動物由来素材は「悪」なのか——立場が割れる

ではウールや毛皮は、サステナブルと相容れないのか。
即答したくなるが、ここは立場が割れる。

Stella McCartney は2001年の設立以来、毛皮・革・羽毛・動物の皮を一切使わないクルエルティフリーを貫いてきた。
動物を使わないことが倫理の核だという立場だ。

一方でウールは、再生可能な資源として評価されてもいる。
耐久性があり、洗濯回数が少なくて済み、牧草地の自然再生に貢献し、広く再利用・リサイクルされる。
長く使い、捨てにくい素材だという見方だ。

同じ素材が、立場によって逆の評価を受ける。
サステナブルという言葉に唯一の正解が用意されていない証拠である。

同じ素材が立場によって逆の評価を受け、唯一の正解がないことを理解させる

制度という段階に入った

長いあいだ、サステナブルは各ブランドの自主的な宣言にとどまっていた。
いまは違う。
法律が動き出している。

EUは2024年、「持続可能な製品のためのエコデザイン規則」(ESPR)を発効させた。
EU市場に出るあらゆる物理的製品が対象で、繊維製品が優先カテゴリーに指定されている。
ただし発効日は資料によって6月13日・7月18日・7月19日と記述が分かれており、ここは確定を避けておく。

もっと直接的なのが、廃棄の禁止だ。
EUは大手企業に対し、2026年7月19日以降、売れ残った繊維製品・履物・アクセサリーの廃棄を禁じる(中堅企業は2030年7月19日以降)。
加盟国には、2025年1月1日までに使用済み繊維の分別回収システムを整えることも義務づけた。

フランスはさらに早い。
2020年成立の「廃棄物循環経済法」(AGEC法)で新品の売れ残り廃棄を禁じ、2022年から繊維製品に適用している。
インドでも、政策シンクタンクNITI Ayogが2021年の報告書で、2030年までの移行、有害化学物質の排出ゼロ、100%リサイクルを掲げた。

「売れ残った服を捨てるのはブランドの自由」という感覚は、少なくとも欧州ではもう通らない。

自主的宣言から法的義務へと段階が移り、売れ残りの廃棄禁止などが制度化されたことを理解させる

市場は廃れるどころか、急成長している

転換点を挙げておく。
1990年代の用語登場、1992年のリオ地球サミット、2000年代初頭のスローファッション、そして2013年4月のラナプラザ崩壊事故。

このバングラデシュの事故は、死者1,100人以上、負傷者2,500人以上を出した。
縫製工場の劣悪な労働条件を世界にさらし、倫理的ファッション運動の転換点になった。
この事故を受けて、Orsola de Castro らが「Fashion Revolution」を立ち上げている。

事故や規制が相次ぐと、市場は縮みそうに見える。
ところが数字は逆だ。

世界市場は2024年の81億米ドルから、2033年には331億米ドルへ。
年平均成長率22.9%の予測である。
最大の市場は欧州だが、最も速く伸びているのはアジア太平洋地域だ。
日本も2025年の約2.7億米ドルから2035年には約20億米ドル規模へ、年平均約24.9%で拡大すると見込まれている。

「欧米の話で、日本やアジアはこれから」という理解は、もう実態に合わない。
イッセイミヤケ出身者が2020年に創業したCFCLは、3Dコンピューター・ニッティングで裁断を不要にし、廃棄をほぼ出さない製法をとる。
「土に還る服」を掲げるTennenは、生地からボタン、縫い糸まで天然素材で、草木染めや藍染めで染める。
国内からも独自の答えが出ている。

ただし、普及には壁がある。
従来の服より値段が高いことだ。
そしてもうひとつ、まだ片付いていない問題が残っている。

ラナプラザ事故を転換点に市場が縮むどころか急成長し、日本やアジアも伸びていることを理解させる

よく引かれる「10%」という数字を、鵜呑みにしないために

ファッション産業は世界の温室効果ガス排出量の約10%を占める——よく引用される数字だ。
国際航空便と海上輸送を合わせた量より多い、という比較とセットで語られることが多い。

この約10%、実は確定した事実ではない。

UNEPやEllen MacArthur Foundationなどの推計では数%〜8%程度とされ、約6%とする資料もある。
産業をどの範囲で定義し、どう算出するかで、答えが変わってしまう。
衝撃的な一文ほど、出所を確かめる価値がある。

数字そのものが揺れるという事実こそ、この概念を扱ううえで覚えておきたい。
負荷が大きいのは確かだ。
だが「どれだけ大きいか」は、まだ一本の線で引けていない。

この概念を手に入れると、何が変わるか。
ブランドの「エコ」や「透明性」を、素材・労働・廃棄という複数の軸で分けて読めるようになる。
自主的な宣言と法的な義務の違いも見える。

冒頭の「エコと書いてあれば安心」に戻ろう。
多くの企業が「サステナブルである」と主張するが、定義も検証データも欠けたままの宣言は少なくない。
だから、見分けるのは消費者の側の仕事になる。
この記事の地図は、そのための一枚だ。

よく引用される『約10%』が確定した事実ではなく、定義と算出で揺れる推計であることを理解させる

FAQ

Q. サステナブルファッションとスローファッションは同じもの?
同じではない。
スローファッションは2000年代初頭に登場した、よく考えて買い長く使うことを説く運動で、サステナブルという広い考え方のひとつの実践形にあたる。
重なる部分は大きいが、サステナブルのほうが素材・労働・廃棄まで含めた広い概念だ。

Q. 「サステナブル」と書いてある服を買えば間違いない?
残念ながら、それだけでは判断できない。
明確な定義や検証可能なデータを示さないまま「サステナブル」と掲げる例が多く、真偽を見分けるのが難しい。
検証データの不在は、この分野の大きな課題のひとつだ。

Q. 素材をちゃんと選べば十分では?
素材選びは重要だが、それで完結はしない。
たとえばポリエステルの服は1回洗うだけで最大70万本のマイクロプラスチック繊維を放出し、食物連鎖に入り込む可能性がある。
負荷は生産から着用、廃棄まで全ライフサイクルに及ぶ。

Q. ウールや革を使うブランドはサステナブルではない?
立場が割れる。
Stella McCartney のように動物由来素材を一切使わないクルエルティフリーの立場がある一方、ウールを再生可能で耐久性が高く再利用しやすい素材として評価する見方もある。
唯一の正解は用意されていない。

Q. 日本にもサステナブルなブランドはある?
ある。
イッセイミヤケ出身者が創業したCFCLは裁断を不要にして廃棄をほぼ出さない製法をとり、Tennenは縫い糸まで天然素材で草木染め・藍染めを用いる。
日本市場自体も2035年にかけて年平均約24.9%の成長が見込まれている。

基礎知識 の記事